11月22日、笠原町のマルナカストアーさんで1年ぶりにマルナカマルシェが開催されました。その中で「第3回陶勝軒・マルナカストアー杯モザイク大会」をこちらも1年ぶりに開催させていただきました。一般の部の決勝戦をビデオに撮りましたので、棋譜と解説を付けてご紹介します。
8名の参加者の中で決勝に残ったのは、今年2月のモザイク名人戦で優勝したペーさんと、モザイクの広報担当をしてもらっているキナコさんのおふたり。実力者同士の対戦でとても参考になる一局だったと思います。先手黒(白タイル)はキナコさん、後手赤(水色タイル)はペーさんです。
自分より棋力があるおふたりの対戦を解説するのは難しいのですが(笑)、学べる点を中心に見て行きましょう。まず序盤で注目するのは、両者ともまん中の中立ゴマを含む四角形をすぐには作らないという点です。中立ゴマの上にコマが載るのはようやく12手目になってからです。これは中立ゴマの真上のポジション([黒69]が打たれた場所)の重要性が評価されていて、そこを相手に取られまいと両者がけん制した結果だと思います。打ち慣れた人なら誰でも知っているように、モザイクでは盤の端よりも中央に近いポジションの方が重要なんです。
この試合は71手目で先手の黒が8コマ差で勝ちましたが、これはモザイクのゲームとしてはかなり手番数が多い方だと思います。ゲームの終盤にはお互いに派手な連続ボーナスが発生するのがよくある展開で、それがモザイクをプレイする爽快感になっている訳ですが、今回の試合では10個以上の連続ボーナスは一度もありませんでした。お互いに相手のボーナス連鎖を止めるように布石をしていた結果だと思います。
中央の上層階をけん制した結果、下層階の陣取りがこの試合の重要なポイントになっています。後手の赤が画面向かって左下と右下の地を囲い込んだのに対して、先手の黒は[1、5、7、11]のラインを作って奥の地を取ろうとしています。この中で妙手だと思うのは[黒15]です。もしも壁を作るなら[赤66]の場所に打ち込みたいところですが、そうすると相手に中立ゴマの上を先に取られて、重要な3階の中心部([黒69]の場所)を取られることになってしまいます。相手もそれが分かっているので、終盤に[赤66]と打つまで空いていた訳です。
もうひとつ赤が黒に有利なポジションを与えてしまったと思われるのは、赤黒が2個ずつ並ぶ四角形を赤が作って、その上を簡単に黒に取られてしまう打ち筋がいくつか見られたことです。例えば[赤16]と打って、その上に[黒17]と置かれていますが、もしもひとつ間を空けて[赤20]の場所に[赤16]を打っていれば、コマの損得は今と同じですが[黒21]の場所は赤のものになっていたはずです。(それで最終的な勝敗が変わっていたかどうかは分かりませんが。)
まだ定石という形でまとめることは出来ないのですが、このように2色が2対2の四角形になった時に自分の手番が来るようにコントロールすることができれば、それはかなりの上級者だろうと思います。連続ボーナスが起こった後に2対2の四角形で止まることはよくあります。相手が置かなくても自分で置けば連続ボーナスはもらえる訳ですが、その次の一手が相手になるか自分になるかでその後の展開が変わって来ます。そこを読み切って、相手に連続ボーナスの発火点を踏ませるというのは高等戦略です。この試合でも、後手の赤は[赤46、48、50、52]と相手のエリアに打って手番の調整を図りましたが、最後は[赤66]と打たされて、それが敗着につながりました。
モザイクは先手が若干有利なゲームですが、今回は先手がその有利さを危なげなく守り切ったという印象です。